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選択的注意とカクテルパーティー効果

カクテルパーティー効果

カクテルパーティー(カクテルなどを飲みながら立食形式で行うパーティー)では、 様々な人たちがそれぞれ会話をしているので、ワイワイガヤガヤ騒がしいですよね。 四方八方からいろいろな会話が耳に飛び込んできますが、 多数の会話が入り乱れて雑音にしか聞こえません。


しかし、そんな中、面白そうな1組のグループを見つけて、その人たちの会話を聞こうと試みます。 すると、そのグループの会話だけは聞き取れるようになります。 相変わらず、他のグループの会話は雑音にしか聞こえませんが。

これってちょっと不思議ですよね。 だって、ついさっきまではその面白そうなグループの会話も雑音でしかなかったはずです。 それなのに、“あのグループの会話を聞いてみよう”と思って注意をそちらに向けた瞬間から、 そのグループの会話だけが、まるで雑音から切り離されたようにして聞き取れるようになるのです。 そのグループの会話を聞こうと試みる前と後で、耳に届いてくる音量は物理的には同じなのにも関わらずです。

この現象を脳科学的に解説します。 私たちの脳には、耳や目などを通じて常に様々な情報が入ってきます。 しかし、いちいち全ての情報を処理していたら脳がパンクしてしまいます。 そこで、脳は情報処理の効率化のために、自らが“選択的に”注意を向けた情報を優先的に処理するのです。 そして、それ以外の情報はシャットアウトしてしまいます。 カクテルパーティーの例では、注意を向けたグループの会話だけが優先的に情報処理され、それ以外のグループの会話はシャットアウトされてしまったのです。

このように、複数あるうちの1つ情報に対して向けられた注意のことを選択的注意といいます。 また、選択的注意の対象となった情報を脳が優先的に処理し、その他の情報をシャットアウトしてしまうことをカクテルパーティー効果といいます。


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トップダウンの注意とボトムアップの注意

ボトムアップの注意

そもそも、注意というのはトップダウンの注意とボトムアップの注意の2種類に分類できます。 トップダウンの注意は選択的注意と同じ意味です。 ボトムアップの注意というのは、他とは異なる目立つ情報や、自分の身に対して危険な情報などに対して自然と向いてしまう注意のことです。

例として、右の画像を見てください。 一本だけ斜めを向いている線に自然と注意が向いてしまうはずです。 別に、「斜めを向いている線に注意を向けよう」と思っていたわけではないのに、自然と、「ん?なんか一本だけ斜めってるぞ?」と感じてしまうはずです。 これはボトムアップの注意です。

道を歩いているときに、走っている車が突然自分のほうに向かってきたら、「やばい!轢かれる!」と思って、そっちに注意が向きますよね。 これもボトムアップの注意です。

なぜ、トップダウンやボトムアップというネーミングなのかというと、これらは情報の流れ方をあらわしているのです。 トップダウンの注意では、脳の高次の領野(“意識や考え”を司っている)が低次の領野(単純な視覚や聴覚の情報処理を司る)に対して、 「これこれこういう情報が入ってきたら、それを優先的に処理しなさい」という指令を出しているわけです。 つまり、情報の流れは高次⇒低次というわけです。

一方、ボトムアップの注意では、低次の領野が高次の領野に対して「変わった情報(または、危ない情報)を見つけましたよ」といったように 高次の領野に対して自主的に報告しているわけです。 つまり、情報の流れは低次⇒高次というわけです。


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