脳波でゲームやPCをコントロールする脳波マウスという製品が2008年頃から販売されています。 まるでテレパシーのようなこの製品は飛ぶような売れ行きをみせました。 頭の中で念じるだけでその通りにゲーム等をコントロールできるとあって多くの消費者が注目したのです。
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この脳波マウスというのはとても面白いものだと思いますが、 この製品を使用しているユーザーがアップした動画には、 「それは脳波じゃない・・・」と言わざるをえないものがあります。
それがこちら。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8500232
この動画の男性は、“強く念じる”といって顔の表情を変えています。つまり、顔の筋肉や目を動かしています。 顔の筋肉や目を動かしたときは、脳波とは比較できないほど大きな電位が生じます。 つまり、この動画の男性は、脳波でゲーム操作しているのではなく、顔の筋肉や目を動かすことによって生じる電位でゲーム操作をしているというのが明らかです。
ちなみに、脳波測定を行っているときに“瞬き”をしただけでも、脳波が埋もれるほどの大きな電位が記録されます。脳波というのは、それくらい微弱なものなのです。
顔の筋肉や目を動かさずに安静にした状態での同様の動画を見てみたいですね。 この製品が電位を測定してそれをゲーム操作に反映させているのは事実だと思うので、繊細な脳波をどの程度測定できているのかに興味があります。
いずれにせよ、面白い製品であることには変わりないと思いますし、このような製品の精度を高めたものを世に広めるのは研究者の夢です。
また、この脳波マウスという製品は、脳科学の研究対象であるBCIを製品化したものです。 それでは、BCIとは何なのかを事項で説明いたしましょう。
BCIは、人の思考を読みとることで、なんらかの操作を行うインタフェースのことをいいます。 人の思考を読み取る方法として最も多く研究されているのは脳波です。 fMRIなどを用いたBCIも存在しますが、ほとんどのBCIは脳波を用いています。 その理由は、脳波の装置が安価であることと時間分解能が高いことにあります。
人間の脳波には人間の意思が繁栄されています。 したがって、脳波を正確に測定すれば人間の意思を読み取れるというわけです。 あらかじめ組まれたプログラムに従って、読み取った意思どおりにPCのカーソル操作などを行います。
ALS(筋萎縮性側策硬化症)などの体が不自由になった人が、 PCや車椅子をコントロールするための手段としてBCIは大変有用です。 BCIがあれば介護者が付きっきりでなくてもある程度の生活は自分だけで行えるようになります。 また、特にロックドイン症候群の患者にとっては、外界と意思疎通を図るための唯一の手段となります。
ゲームのコントローラーとしてBCIを用いることができます。 もしも完璧なBCIが実現すれば、その経済効果は大変大きいものだと予想できます。
BCIと同じような言葉にBMI(Brain Machine Interface)があります。 BCIとBMIは基本的には同じものをさしますが、異なるのは電位の測定の仕方です。
BMIは、被験者の頭に電極を突き刺して直接的に電位を測定します。 そのため、とても制度の高い電位を測定できるのですが、被験者の身体的負担が大きいのが難点です。
ちなみに、このように被験者にダメージを与えるやり方を侵襲的といいます。 一方、BCIは被験者にダメージはないのですが(非侵襲的)、測定した電位の制度は低いことが難点です。
※研究者によっては、BCIとBMIを区別しない人もいます。
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