大学や大学院で脳の勉強・研究がしたいけど、どんな学部学科へいったらわからない!!といった人のために、 各系統ごとにどんな脳の研究がなされているのかを説明いたします。
まず言えることは、脳だけを学ぶための学部学科は存在しないということです。 脳についての講義を行っている大学も極めて少ないと思われます(医学部は別)。 脳科学は発展途上の学問であり、まだまだ体系化されていません。 したがって、脳科学の教育は、学部4年や大学院での研究がメインとなります。
また、脳を研究している人は様々です。 医者を始め、物理系の工学者や心理学者も脳の研究をしています。 それぞれの系統ごとに、得意とするバックボーンを武器にして研究がなされています。
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医学系は、誰もが想像できるでしょう。 脳といえば、医学部です。 つまり医者になるということですが、医者の仕事は人の病気を診断して治療をすることです。 したがって、医学系の脳の研究対象は主に病気となります。 脳の病気の原因を突き止め、その治療法を模索するのです。
しかし、医学系の研究者のすべてが病気の研究をしているとは限りません。 例えば、ALS等の体が不自由な患者のためのBCI(BMI)の研究を行っている研究者(医者)もいます。 ただし、そのような研究者は一部であり、ほとんどが病気の研究となります。 しかし、脳を研究したいからといって医学部に進学するのはハードルが高すぎます。 医学部に進学すれば、脳の病気だけでなく医者になるための教育を受けるわけですから、脳だけに興味がある人にとっては遠回りになるかもしれません。
よって、医学部に進学するべき人は、脳の病気に興味があり医者になることも望んでいる人です。
工学系の脳科学者は近年急増しています。 研究対象は、脳の機能を解明するものからBCI、脳の病気や心理物理など非常に幅広いのが特徴です。 工学系の脳科学者は数学や物理、実験装置の知識などが、他の系統の脳科学者よりも圧倒的に優れています。
具体的な学科は、物理、制御、計測、電気電子など様々です。 しかし、大学の学部では、卒業研究を除いて脳の勉強はほとんどできません。 学部で学ぶ内容は数学や物理などがメインとなります。 この時期に培ったそれらの知識が大学院以降での脳研究の基礎となり、最大の武器ともなります。
脳は電気活動しているため、脳研究では電磁気学の知識が絶対に必要になります。 脳波などを解析する時には大学レベルの数学を知ってるいる必要があります。
また、実験をするのであれば、実験装置に対する知識が必要になります。 計測原理を理解せずに、市販の装置を説明書通りに使用するだけでは、自分がやっている実験を根本から理解することはできません。
したがって、私は、脳科学の研究を行いたい人には工学系の学部へ進学することをお勧めします。 脳科学を研究するための知識が最も身に着くのは工学系で間違いないでしょう。
人間の心理が生み出される場所は脳です。 したがって、心理学と脳科学は切っても切れない関係にあります。
心理学系の脳科学の研究内容は、人間の心理を解き明かすことです。 人間の心理状態や振る舞いを調べるというのは単に心理学ですが、 それを脳に焦点を当てて、ある心理状況下での脳機能や脳活動を調べる場合、それを心理物理や脳科学と呼びます。 したがって、研究者によって様々ではありますが、 心理学系の脳科学者は脳の心理的な側面を重視した研究を行っています。
心理学系の欠点として挙げられるのは、数学や物理などで苦労しがちだということです。 理工系の学部では数学や物理を深く学べますが、心理学部の場合は理工系ほど学ぶ機会に恵まれていないでしょう。 しかし、研究では統計学などの知識が必要とされることが多いので、数学の知識は重要です。
脳の器質的な側面よりも、心理的な側面に興味のある方は心理学系の学部へ進学することをお勧めします。
哲学系の脳科学者は主にクオリアなどの問題を研究対象としています。 実際に実験が行われることは少なく、ほとんどは思考実験を通して論理展開がなされます。
哲学系の学部は、クオリアや意識などのハードプロブレムに興味のある方にお勧めです。 しかし、量子力学を始めたとした物理の知識も重要となることを心得ておくべきでしょう
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